Qt 5.6.0 がリリースされました。
当初の予定から三ヶ月遅れましたが、ようやく Qt 5.6 がリリースされました。Qt 5.6 は 最低3年間サポートする Long Term Support(LTS) 版となります。商用版のサポートを利用している人はこれまでも2年以上の期間のサポートされていましたので、そんなに変わらないのではないかと思われるかもしれません。しかし、Qt Project のサポートと The Qt Company のサポートは意味合いが全く異なることに注意してください。
これまでの Qt のリリースポリシーでは「パッチは基本的に最新バージョンにのみ適用(セキュリティパッチは除く)」としていました。メジャーバージョンの変更時(ex. Qt4 → Qt5)では古いバージョンが長くメンテナンスされることもありましたが、バグ修正は基本的に最新版に対して行われ、旧バージョンが修正されるかどうかはケースバイケースでした。また、商用サポートでは Q&A に対応してバックポートパッチを出すことはありますがマイナーバージョンが古い Qt が継続的に修正されることはありません。このため、これまでは新しいマイナーバージョンが出ると古いマイナーバージョンが新しくリリースされることはありませんでした。
Qt 5.6 の LTS ではサポート期間バグ修正を行い、パッチリリース(5.6.x)を続けることになっています。
なお、Qt 5.6 は C++11 を必要としない最後の Qt となる予定です。
Qt 5.6 の主な変更点は以下の通りです。
- Windows 10(win32 と WinRT の双方)を正式にサポート
- Windows Embedded Compact 2013 サポートの追加
- High DPI サポートの刷新
- Qt Core: コンテナクラスに reverse iterator と key_iterator, const_iterator を追加
- Qt Network: HTTP リダイレクトに対応
- Qt Widgets: ドックウィジェットのコードからのリサイズ対応など
- Qt Location: 正式リリース。HERE, MapBox, Open Street Map に対応
- Qt NFC: Android サポート
- Qt Positioning: OS X サポート
- Qt WebView: WinRT サポート
- Qt WebEngine: Chromium 45 ベースに更新
テクノロジープレビュー版のモジュールは以下の通りです。
- Qt 3D(Qt 5.5から引き続き)
- Qt Quick Controls 2
- Qt SerialBus
なお、以下のモジュールがバイナリパッケージから削除されています。
- Qt WebKit
- Qt Quick 1
- MNG, JPEG2000 用イメージフォーマットプラグイン
また、以下のモジュールが非推奨となりました。
- Qt Script
- Qt Enginio